紫陽花が零れ落ちそうに咲いていた。
みごと平成も残り半年。現在6月。
季節は初夏に差し掛かり、つくばも梅雨入りしている。
早いものだ。みなさんお元気であろうか。
筆者は昨年、つくばに編入学した。
春の入学式から季節を一巡りし、自分のつくば生活を象徴する場所ってどこになるのであろうかと、ふと考えてみた。
卒業間近かよという浸りっぷりだが、きっと雨のせいだ。
晴れぬならひたってしまえである。梅雨に浸りましょう。
さて。
学内循環のバス停に木造ベンチがある。私はバス通学なので、こっそり腰掛けては、ぼーっとしている。
座ると、道路を挟んだ向かい側にはシラカシが、両脇にはトウカエデが連なっている。この並びでパサついた木のベンチに腰掛けていると、並木の一部になれた気がするのだ。
編入後、新しい刺激に楽しく日々を送っていた。楽しかったのだが、授業は詰まっていた。授業を受けると諸々の締め切りも等しくやってくる。そんなに急には成長できず、できない自分を丸め込むため心臓に毛を生やしていった。
良いことがあった日も、できない自分に落ち込んだ時も、申し訳なさで縮こまっているときにも。いつもそこに佇み私を見送ってくれていたのが、バス停のベンチである。
木のぬくもりを感じつつ、連なるカエデの列に加わり、なんとなく風に吹かれていると前向きになれた。
しんどいときはカエデになっていたのかもしれない。
卒業後に大学を訪れるとして、たぶん口に出すほどではないけれど、チラッと見に来たくなる場所が、私の場合バス停前のベンチになりそうである。
ここまでベンチについて書いたのは初めてである。
たかがベンチ、されどベンチだ。
私にとってバス停のベンチは、ただの古ぼけたベンチではない。
卒業まで短い人で2年、長い人で9年以上。
これまでもこれからも、キャンパスは誰かの思い入れのある場所をたくさん抱えていくのだろう。
あなたの、思い入れのある場所はどこだろうか。
有るあなたにはこっそり教えてほしいし、無いあなたには袖振り合うもなんとやらだ。この文を読んで頂いたのもなにかのご縁ということで、ふとした瞬間、どうということのない場所に思い入れを持ってはいないか、ちょっと思いを巡らしてみていただけると嬉しい。
これまでにもその場所に同じ思いを抱いていた人がいるかもしれないし、これから先、同じ思いを抱く人が現れるかもしれない。
季節は巡り、人は行き交い、期末課題や試験はやってくる。
文章:ゆーみん