自分たちの手で宇宙へ-液体燃料ロケット開発/Project Lazarus

こんにちは😌

筑波大学の学生団体を取材する「はっけん!!学生団体」。前回の記事から約2か月と、これまでにない頻度での更新です(笑)今年(といってもあと半年…)はツクナビにも力を入れていきたいと思っております!サークル・学生団体を宣伝したいという方、いつでもご連絡お待ちしてます。


話がずれてしまいましたが…

今回ご紹介するのは、自らの手でロケットを開発し宇宙(高度100km)へ飛ばすことを目標に活動をしている、筑波大生中心の学生団体Project Lazarusさんです!

共同代表を務める、田渕宏太朗さん(工学システム学類4年)と門間彩介さん(同4年)にお話を伺いました。

ロケット開発の今

宇宙開発は、冷戦時に国の威信をかけた宇宙開発競争によって飛躍的に発展したこともあり、一昔前まではNASAやJAXAなど国の機関が中心となって研究・開発がなされてきました。しかし現在では宇宙をビジネスチャンスと捉える民間企業の宇宙開発が盛んになっており、国の機関を超す勢いで開発が進められているそうです。数年前まで夢物語だった宇宙旅行も、今では誰でも行ける時代に差し掛かろうとしています。みなさんも、”スペースX社”や”ブルーオリジン”など有名な会社の名前は耳にしたことがあるのではないでしょうか。特に民間による宇宙開発が進んでいるのはアメリカで、上で紹介した2つの会社もアメリカの企業です。

さらにアメリカでは、民間企業による開発だけでなく、学生団体による宇宙開発も盛んになっています。その1つが南カリフォルニア大学のUSCRPLで、この団体は世界で初めて学生団体として宇宙にロケットを飛ばすことに成功しました。ただこの学生団体が用いたのは固体燃料ロケットという、花火の火薬のような固体の燃料を用いるロケットで、Project Lazarusの目標としている液体燃料ロケットとは違います。液体燃料とはその名の通り、ガソリンのような液体を燃料とするロケットです。アメリカやカナダでは液体燃料ロケットで宇宙を目指すプロジェクトを行っている団体があるものの、日本国内ではこのような動きは無く、おそらくProject Lazarusが日本初挑戦となります。

ロケットサイエンスという学問

“It’s not rocket science.”という英語表現を耳にしたことはありますか。意味は、それはロケットサイエンスではない…ではもちろんありません(笑)ここでの「ロケットサイエンス」とは「難しいこと、難解なこと」ということの比喩表現として使われています。ということで、それを否定した上の例文は「それは難しいことではない」「たいしたことではない」などという意味になります。つまり、英語圏でロケットサイエンスとは難しいことの象徴となっているのです!!!

ここからも分かるように、ロケットサイエンスとは非常に難しい科学分野の一つで、機械工学のなかでも重要な流体力学、熱力学など様々な分野を用いる学問の集合体といえます。このように様々な学問を1度に学ぶことのできるロケットサイエンスに携わることは、宇宙工学のみならず多様な分野で活躍することのできる可能性も秘めています。


ロケット開発と現状について少しでもご理解いただけたでしょうか。ロマンはありますが、なんだかスケールが大きくて現実感がないかもしれません。しかし、いつも通っている筑波大学という1大学の学生たちがこうやってロケットを通じて世界と戦っていると考えると、少し身近に感じてきませんか…!

Project Lazarusのメンバー

そんな高度な研究開発を行うProject Lazarusのメンバーは主に筑波大生。お話を伺った共同代表2人の他に4年生が4人、3年生が3人、2年生が1人、東海大学の2年生1人の合計11人で活動しています。11人でロケット開発をするというのは本当に大変で、圧倒的に人が足りていない状況だそう。参加してみたいという人はぜひ連絡してみてはいかがでしょうか。将来、「日本初」の称号が得られるかも…!

Project Lazarusのロケット

Project Lazarusが高度100kmを目指すロケット「Pheasant」は高さ7m、直径50センチ、燃料を積んだ重さ1トンが想定されています。また、エンジンは15キロニュートン級のもの(1.5トンのものを浮かせられるだけの力をもつ)を開発中です。現在はその前段階としてのエンジンNalgeneを開発中で、燃焼実験が3月末〜4月にかけて北海道の植松電機で行われました。その模様はProject Lazarus公式ツイッター公式インスタグラムのストーリーハイライトからご覧いただけるので是非!


誰もやったことがないことをやろう

ここからは、取材を通して疑問に思ったことに答えてもらいました。

ーーこのプロジェクトが発足したのは2019年とのことですが、やろうと思ったきっかけは何ですか?

田渕さん:はじめは私ともう一人で、誰もやったことがないことをやろうということを話していたところから始まりました。どうせならでっかいことをやりたいと考えて、そうなると自分たちでロケットを作って宇宙へ飛ばすというのが一番スケールがでかいなという話になりました。その後、もう一人のメンバーが筑波大学のロケットサークルSTEPに所属していた繋がりでそこから数人参加してくれることになり、だんだん今のメンバーが集まりました。

ーーなぜ液体燃料にこだわっているのですか?

田渕さん:確かに、固体燃料より液体燃料を使うほうが構造的に複雑となり、その開発は難しくなります。しかし、燃料のポテンシャルを最大に引き出せるという意味で性能が一番いいのが液体燃料ロケットなんです。他には、固体燃料より液体燃料のほうが開発が難しいので、単純に難しいものにチャレンジしたいという理由もあります。

固定概念を打破したい

ーー高度100kmを目指すのはなぜですか?

田渕さん:宇宙の定義が高度100kmからなんです。今まで学生団体として宇宙までロケットを飛ばしたのはアメリカの大学ただ1つ。僕たちも宇宙にロケットを飛ばせれば、日本国内の学生団体も「あいつらにできたなら僕らにもできるはずだ」というふうに思ってもらえると思います。そうして周りに刺激されてどんどん宇宙開発が盛んになっていってほしいですね。僕たちが一つの道しるべ、先駆者になれたらいいです。

門間さん:僕は他のロケット開発をする学生団体にも所属してたけど、そこではどうしても宇宙ではなく高度1kmだったり3kmだったりとかを目標にしていて、低い高度しか飛ばせないという固定概念にとらわれていると感じていました。そのような固定概念があると、宇宙に目を向けている世界の学生と争うときに同じ土俵にすら立てない。それを僕らが挑戦することで打破していきたいです。もし仮に100kmを成し遂げられなかったとしても、挑戦する姿勢を示すことでロケット開発を学生にとって身近に感じてもらうことも大切だと思います。

ーー次の打ち上げでは高度5km程度を想定しているということだったのですが、100kmに到達するのはいつぐらいになりそうですか。

田渕さん:一度打ち上げををできればそのときに知見がたくさん得られるので、今後2年以内には100キロに到達できると思っています。

門間さん:いきなり100km飛ばすのではなく、5kmくらいからチャレンジすることで実績を積み、自分たちには技術があり100km飛ばすのも夢じゃないんだということを説得させていきたいと思っています。そうして自分たちの本気度を示していって、協力や協賛も徐々に得たいと思っています。

ちなみに日本の学生団体が開発したロケットの最高到達高度は、正式記録としては九州大学の3km。高度10kmでさえ日本の学生団体では今まで成し遂げられていないことから、高度100kmなんて誰も挑戦しようとしなかったことが分かりますね😳

技術面以外の問題

ーーいままで特に大変だったことはなんですか。

田渕さん:私たちが活動するにあたって一番必要なのが場所です。実験をやる場所だったり、荷物を保管する場所だったり。大学公認の団体ではないので、大学内で探そうとしても見つかりませんでした。
ロケットエンジンの燃焼実験をする場所を探すのも大変で、最初は大学内でできたらいいなと思っていたけど、安全上の理由だったりでダメでした。最終的には、北海道の植松電機さんを見つけて、自分たちで交渉して実験させてもらえることになりました。

門間さん:最初のほうは、実績がないから協力してくれる人がどうしても少ないんです。技術的な面でいうと、今までの研究の積み重ねでノウハウ自体はあるんですが、実際に燃焼実験をするとなると、場所の問題や法律面での問題も出てきて。そういうところも日本国内でロケット開発をやってる人が少ない理由だと思います。そこを一歩乗り越えるというのが本当に大変で。今、それを乗り越えて、燃焼実験をできたということが僕らに誇れるところだと思います。

ロケットは開発するだけでも困難なのに、技術的な面以外でこんな意外な弊害があるんですね。学生ということで活動を応援してくれる人はいるものの、実際に研究や実験の場所を提供してほしいとなるとうまくいかないことも多いとか。

ーー今回、初めてクラウドファンディングをされるということですが、どのような目標をもっていますか?

田渕さん金額としての目標は100万円です。ロケットエンジンを作るには材料費などでかなりのお金がかかるからということもありますが、クラウドファンディングを通して多くの人に僕たちのプロジェクトを知ってもらうというのも大きな目的です。8月から2ヶ月ほど行う予定です。

ーー今後の予定を教えてください。

田渕さん :今年の3月に、無事1回目のエンジンの燃焼実験を終えることができました。2回目の燃焼実験は8月末に行われる予定です。その後は3回目、4回目と燃焼実験を2ヶ月おきに実施し、打ち上げは来年夏あたりになる予定です。その打ち上げでは高度5キロを目標とし、その後の開発の知見を得ることを目標にしています。


今回の取材はここまでです。誰も挑戦したことのないことにチャレンジし、その後の道しるべとなる…。頭では分かっていても、いざ実行しようとなるとなかなか難しいですよね。そういったことに果敢にチャレンジしていくその姿勢、我ら学生団体C4もぜひ見習っていきたいです。

またProject Lazarusのクラウドファンディングはこちらで行われています!応援したいと思われた方はぜひぜひご支援をよろしくお願いします!

Project Lazarusの最新情報については以下ををチェック!
Project Lazarusホームページ
Project Lazarusツイッター
Project Lazarusインスタグラム


この記事を読んで、宇宙ってロマンだな…いいな…と感じたそこのあなた!私たちの発行しているフリーペーパー「ツクマガ」では、過去に宇宙をテーマとして制作しました。ぜひこちらからご覧ください!また、連載「ツクナビ文化部」では「宇宙の旅に行こう!」と題して、SF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」を紹介しています。そちらもあわせてどうぞ🚀💫

ではまた次回お会いしましょう~👋🏻

取材・文章:さき

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