自然体の中に光るユーモアセンス・田島列島さんの魅力を知ってくれ!漫画『水は海に向かって流れる』

 

 

こんにちは。3月文化部担当の平石です。
3月担当だったのに執筆時期は4月後半です。
その間何をしていたかというと、ツクマガ 制作に励んだり、流れる雲を眺めたりしていました。

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「流れる」といえば、田島列島さんの漫画『水は海に向かって流れる』がマンガ界を賑わせているのはご存知でしょうか。
今回はこちらの漫画を紹介していきます。

 

田島列島さんについて

さて、皆さんは田島列島先生をご存知でしょうか。
漫画に詳しい方なら知っている方も多いかもしれません。
2014年の初長編『子供はわかってあげない(上下巻 / 講談社)で、多くの漫画ファンの心を掴んだ方です。

『子供はわかってあげない』は、水泳女子と書道男子の絶妙なやり取りを描いた青春漫画ですが、父親探しや新興宗教、超能力などが絡む荒唐無稽な設定を見事なバランス感覚で爽やかに、甘酸っぱく仕上げております。

ファン待望!『水は海に向かって流れる』

しかし先の作品以降、読み切りや短編が発表されることはなく、ファンは完全に田島先生に飢えておりました。

…その沈黙を破るがごとく発表されたのが、今回ご紹介する『水は海に向かって流れる』です。


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(画像はamazonより)


作品が発表されるや否や、数々の漫画賞に軒並みノミネート。
「マンガ大賞」や「このマンガがすごい!」など4賞を受賞した話題作です。

【あらすじ】
高校進学を機に、叔父の家に居候することになった主人公・直達。しかし最寄駅の迎えに来たのはなぜか叔父ではなく、26歳OLの榊さん
彼女に付いていくと、案内されたのはシェアハウスだった。
漫画家になっていた叔父、女装の占い師、榊さんを古くから知る大学教授、そして榊さん、直達の奇妙な共同生活が始まる。
直達と榊さんの間には10年前から続く予想外の因縁があった。
静かな緊張感が走る共同生活だが、次第に直達と榊さんは10年前の事件に、そして互いに向き合っていく。

10年前の事件というのがなかなかハードなんですが、前作『子供はわかってあげない』から続く見事なバランス感で絶妙な体温を保っています。
キャラ同士の会話やワードセンスがおかしくて、ついクスッとしてしまいます。

例えば、直達と漫画家の叔父のやり取り

「さあ おこづかいをあげるから黒く塗ってみようのコーナーだよ」
「あのさ…おこづかいいんないから 俺の質問に正直に答えてほしいんだけど」
「…んー?」
「ただし返答次第ではおこづかいももらう!」
「新手のジャイアンかお前は!」

『水は海に向かって流れる』Ⅰ巻/P74

絶妙にテレビ文化やドラえもんネタを挟んでくるあたりが面白いです。
なのに会話の流れとして自然です。すげー。

あと、ちょいちょい小ネタを仕込んでくるのがおかしくて笑っちゃいます。
ゴゴゴ紅茶多いお茶とかでてきます。さらりと登場。

各話のタイトルセンスも良くて、オマージュが多い印象です。
個人的に好きなのは第4話「ピチピチチャプチャプノープランプラン」ふざけているようで話の要素を見事に拾い上げているんですよ。

前作『子供はわかってあげない』もフランソワ=トリュフォー監督の仏映画『大人は判ってくれない』のオマージュですが、元作品を知っているとタイトルだけで2倍楽しめると思います。

自然体が心地いい

先ほどもチラッと触れたんですが、田島列島先生の魅力の1つは自然体であること。
荒唐無稽な設定なのに、ファンタジーに依りすぎないのは淡々と平熱のような体温で描かれているからだと思います。

自然体っていいですよね。派手さはなくとも気を張らず、淡々としていて。
個人的には是枝監督の映画が好きな方は、田島列島ワールドにもハマるんじゃないかと思います。

映画『海街diary』は腹違いの姉妹の関わりを描いていましたが、暗さや重さは感じず、風通しのよさが心地いい作品でした。

メディア情報

さて、話が少し逸れてしまいしたが、『水は海に向かって流れる』の第1話、「マガポケ」で無料で読めます!
少しでも気になった方は是非読んでみてはいかがでしょうか。(マガポケはコチラ)

また、冒頭にご紹介した『子供はわかってあげない』ですが、今夏映画が公開されます!
6/26(金)より全国公開ですので、こちらも気になった方は必見です!

お家で過ごす時間が多い昨今ですが、皆さんも是非、田島列島先生の作品を読んでみてはいかがでしょうか。お読みいただきありがとうございました。

 

(文責:平石)


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