文化部 – ふくろうくん

2019年10月分担当のにしはらです。

疲れているときって、懐かしいものが心に沁みますよね。例えば、子供に頃に好きだったアニメやテレビ番組のイントロを聴いたとき、故郷を想わせる田舎特有の野原の焼ける匂い、子供の頃に行った場所、色あせた写真など、人それぞれです。

大人になるにつれて、小さなハッピーを見つけるのが下手になっていく気がします。大人にはなれてないですね、いまだに小学生の気分です。
大学生になって一人暮らしをするようなって、突然いろんな能力や責任感が求められ始めて、息苦しさや焦燥感、劣等感を感じて、こどもの頃に戻りたいな、なんて思ったり。

先日、Twitterで、アーノルド・ローベル作、三木卓訳の「ふくろうくん」という絵本のbotを見つけました。印象的な言葉の連なりが一文ずつツイートされているのを見て、子供の頃に夜寝る前に両親が絵本を読んでくれていたのを思い出して、また読みたくなってAmazonで購入しました。

「ふくろうくん」は、一冊の本の中に5つのストーリーが描かれています。

おきゃくさま
こんもり おやま
なみだの おちゃ
うえと した
おつきさま

どれも大好きなお話ばかりですが、私が今読み返していいなと思った「なみだの おちゃ」を紹介します。

あらすじとしては、主人公のふくろうくんが、やかんに涙をためて「なみだの おちゃ」を淹れるために悲しかったことを一つずつ振り替えるお話です。その悲しかったことを振り返るシーンのことばがとても綺麗で切ないのです。

「あしの おれてしまった いす。」
「うたえなくなった うた。だって うたの ことばを わすれちゃったから。」
「だれも みてくれる ひとのいない あさ。だって みんな ねむっているんだもの。」
「おさらに のこってしまった マッシュポテト。」

 
普段、生活していて意識していないようなことをふくろうくんは「かなしかった」と、夜な夜な涙を流し、最終的には、ふくろうくんはなみだのおちゃを飲みながら幸せを感じます。ちょっとしたことで涙を流し、幸せを感じられるのって素敵ですよね。大人になるにつれてこういった感情って薄れていくのでしょうか。

「ふくろうくん」では、登場するキャラクターは主人公のふくろうくんだけです。しかし、「なみだの おちゃ」での身近なものに対する切ない気持ちや、「おきゃくさま」「おつきさま」で登場する雪や月に対して一喜一憂する姿が描かれていることで、孤独感を感じさせないのです。けれど、ふくろうくんはみんなが眠る夜の中ずっと一人暮らし。そんな中で彼は賑やかに幸せに、時には泣いたりして生活しています。

人は、あいつがこうだ、あいつより自分の方が、あいつが悪い、なんて考えてしまいます。それは当たり前だし、私もそう考えてしまいます。しかし、ふくろうくんのような純粋な優しさや、小さなことでハッピーを感じられると、幸せに過ごせるような気がします。こんな人間になりたいですね。あ、ふくろうか。

「ふくろうくん」は、紹介した「なみだの おちゃ」以外も本当に素敵なお話です。挿絵はとても愉快で愛らしく、夜の独特のあたたかい雰囲気が素敵なので、ぜひ読んでみてください。絵本って、全部ひらがなで文節分けされてて、なんだか穏やかな気持ちになれます。

「ふくろうくん」でなくても、何か自分にとって懐かしいものを振り返ってみると、何か感じられるかもしれませんね。少しでも何かのきっかけになれたら幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 

 

 

 

にしはら

 

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