<名前>
堀部一寿
<生年月日>
1961年4月13日
<経歴>
東京コンセルヴァトアール尚美教育科、研究科(声楽専攻)卒業。
現在、ピアッツァアルテ音楽教室教室長兼、つくば音楽団体交流協議会会長兼、ミュージックスペースつくば代表。
<趣味・特技>
子供と一緒に料理をつくること、卓球
<宝物>
音楽の仲間達

<interview>

「子ども達のオーケストラと親子合唱による未来へのメッセージ」
11月に行われる『つくば公演2001 ぞうれっしゃがやってきた』のポスターにある1節。
はたして、ぞうれっしゃとはいったい何なのか。
そこにはどんなメッセージがあるのか。
演奏会でしかわからないはずの答えを、一足先に実行委員長の堀部さんに尋ねてみました。

—「ぞうれっしゃがやってきた」というものについて詳しく教えてください。

「ぞうれっしゃがやってきた」は、実話に基づいて創られた合唱組曲です。
今から51年前、第二次世界大戦が激しくなる中、動物園の動物が「空襲で脱走して人間を襲ってはいけない」という理由で、つぎつぎに殺されていきました。しかし、名古屋にある東山動物園の北王園長は、罪のない動物を殺していくことはしのびないと、象を殺すことができず、最後まで象を守りました。
戦争が終わり、東京・台東区の子どもたちは、これらの人々の思いで生き残った象を一目見たいと思い、象を東京に連れてきてほしいと子ども議会で要請します。長い戦争の中で弱った象を東京まで連れていくのはとても大変である、と最初は難色を示されていたのですが、子どもたちの創意とその心に動かされた園長などの多くの大人たちの働きで、東京から名古屋の東山動物園にむけて特別じたての「ぞうれっしゃ」が走ることになりました。そして、この話は全国につたわり、やがて全国各地から「ぞうれっしゃ」が走るようになったのです。
戦争のむごさとその中での象を守った人々の心、愛とは平和とはを問い、さらに子どもたちの創意が大人たちを動かしたというこの実話は、30数年を経て、合唱曲やとなって、今また全国各地にひろがっています。このなかで全国を結ぶ「ぞうれっしゃネットワーク」も発足しているのです。

— 今回の公演に至った経緯を教えてください。

今回の公演は、つくばでは3回目となります。
1回目の上演は、1990年12月、一般公募により200名を越える親子が合唱に参加し、満員の観客で大成功を納めました。演奏会終了後、合唱参加者や観客から「1回きりの公演で終わりにしたくない」「ぞうれっしゃの感動をもっとたくさんの子どもたちに知ってほしい」等、多くの声が寄せられて、上演した実行委員と公演参加者等で「つくばぞうれっしゃの会」を結成し活動してきました。
その後、映画「ぞうれっしゃがやってきた」が作られ、「ぜひつくばでも上映を」の声で、1993年2月にノバホール(2回上映)で「『ぞうれっしゃがやってきた』映画と合唱のつどい」を行って、194名の親子が合唱に参加、1300名を越える観客で成功して、その収益金で「ぞうれっしゃがやってきた」の原作絵本87冊を市内の保育園、幼稚園、小学校、図書館等へ寄贈しました。
3回目の今回は、おそらく全国でもめずらしいと思いますが、一般公募によるジュニアオーケストラ60名の演奏と150名の親子合唱団での上演を行います。昨年12月に実行委員会準備会を組織して取り組みを始め、今年1月に実行委員会を結成し、今回の公演の実現に至りました。

—今回の公演の成功のために具体的にはどのようなことをしてきましたか?

5月からジュニアオーケストラは毎週、合唱は月3回の練習を重ねてきました。7月には、ぞうれっしゃのイメージをふくらませるための合宿を行うなど、前回以上の取り組みをしてきました。指揮者には、聖徳学園大学附属聖徳高校音楽科教諭の藤村誠さんを迎え、同校の室内管弦楽部には全面的なご協力を頂いています。その他、オーケストラには一般参加の子どもたちに加え、地元の、筑波大学管弦楽団、つくば学園都市オーケストラ、土浦交響楽団などからもエキストラ参加を頂いています。児童合唱では、土浦市の「土浦少年少女合唱団」指揮者の倉田照子さんに指導をお願いし、同団も参加して頂くことになりました。また、前回も協力をいただいたつくば市で活動されている児童合唱団「天使の森」の皆さんにも参加して頂いています。より一層地域にぞうれっしゃの輪が広がってきたのを感じます。

—「ぞうれっしゃがやってきた」にこめられたメッセージはどのようなものだと考えていますか?

1つは「命の大切さ」です。サーカスの娘達が、動物園に売られて行く象たちに愛情を注ぐ場面。何の罪もない動物たちが、人間の都合により殺されてしまう場面。その辺りを見て、何かを感じて欲しいと思います。
そして、「一人一人、力の弱い人間達(子ども達)でも、力を合わせれば希望を叶えることが出来るということ」です。「象を見たい」という子ども達の願いが、大きな力となり、大人達の心を動かしてこの「ぞうれっしゃ」が走ることになったのです。
このことは、今を生きる人にも大きな希望の力となってくると思います。

今回の公演を企画したのは昨年なのですが、アメリカでのテロ事件以来の社会状況の元で、この平和への願いといきものの命の尊さを伝える「ぞうれっしゃがやってきた」を上演するということに、大きな意義と使命を感じずにいられません。ぜひ多くの人達に、過去の戦争から得た教訓を知ってもらい、世界平和への願いを多くの人により深く、感じて欲しいと願っています。
ニューヨークのビルに飛行機が突っ込んで行く映像を見て、子ども達はどう感じているのでしょう。また、アメリカの飛行機が、アフガンで爆弾を落とす姿に何を感じるのでしょう?これからの時代を担うべき子どもたちに、我々は何を伝えられるでしょう?
「ぞうれっしゃ」の中では、動物たちを殺す大人の行動を身勝手だと思います。しかし、もし動物たちを処分しなければ、オリを破って出てきた猛獣たちに自分達が食べられてしまうかもしれない。そういうやり切れない状況を生むのが戦争というものなのです。
今回の公演で、親たちが戦争の真実について子どもたちと対話する良い機会となってくれればと思います。

— 今回ジュニアオーケストラと親子合唱の共演ということですが、その意味はどのようなものだと考えていますか?

これまで多くの人たちと作品を仕上げる中で、前述のメッセージを、歌いに来た子どもたちに伝え、ステージでは聞きに来てくれた子どもたちに伝えて来ました。
それを、オーケストラで伴奏をするという形で関ってもらいながら、伝えることが出来たら、また新たな形での広がりが出てくると思います。
また、楽器を演奏する多くの子どもたちが、オーケストラという形での演奏の経験をすること自体も、得がたい貴重な経験となってくれると思います。さらに、ストーリーを持った曲の歌の伴奏ということで、自分たちが出している音の一音一音に意味があるのだということを知ることが出来れば、さらに音楽の持つ力の深さを知る良い機会となってくれることと思います。

— この活動をやっていて、何かおもしろかった事・つらかった事・ためになった事があれば教えてください。

大変だったのは、楽器を演奏する子どもたちはたくさんいるし、こういう企画に参加したいと思う子達もたくさんいるのに、実際に参加してくれる子がなかなか集まらなかったことです。つくば、土浦近郊の小中高校をずいぶんと訪ねまわって、呼びかけを行いましたが、どこも、夏までは吹奏楽コンクールがあり、その後は定期演奏会や文化祭と決まった行事に追われ、子どもたちにはそれ以外の活動に割く時間が無いのです。
そういったコンクール偏重の横並びのやり方には疑問を持ちます。「ぞうれっしゃ」のような得がたい経験をするチャンスがあるのに、それをやる時間がないわけですし、他の学校と同じような活動をして、コンクールなどで結果を出さないと評価されないようなのも変ですよね。別にコンクールそのものを批判しているわけではありませんが、大事なのは、子ども達がいかに日々充実した生活を送り、多くの経験を出来るかということですよね。それにはもっといろいろな方法があると思います。

ためになったのは、今回の公演のために実に多くの人と知り合えて、一緒に舞台を作っていく喜びを共有できることです。
以前から、つくばの文化発展には、外から与えられたものではなくて、地元の人たちが、この地に根ざしたここにしか存在しない"何か"を作っていくことが必要だと思って活動してきています。そのためには、志を同じくする人や、地元に根を張って活動して行く人たちと協力し合えて、何かを造っていく経験が大切だと思います。そういう大きな目的のために、今回の公演は、貴重な一歩を記したと思っています。

—『つくばぞうれっしゃの会』の今後の活動について教えてください。

親子で歌う合唱団で、この「ぞうれっしゃがやってきた」以外に、こういう編成のための作品は、ほとんど有りません。
夢としては、自分たちのオリジナル作品を作って演奏するということですが、今は、まず平和をうたう作品をとりあげて、この地球上から戦争や紛争、テロがなくなるまで、歌いつづけて行きたいと思います。

— 筑波の学生に、メッセージをどうぞ。

筑波には日本全国から多くの学生が集まっていますよね。社会人も、全国から、また世界から多くの人が集まって、いろいろな文化が交わっている所だと思います。
我々、地元に住む人間は、そういった地域性を生かし、ここにしかない新たな文化の発信をしたいと願っています。
仮に、ここに住むのは学生時代だけと思っている方も、この地でどんな活動をしている人たちがいて、どういう所なのか、触れて見てください。
そして、私達にどうすればここが住みやすい場所になるかアドバイスをして欲しいと思います。これから、「ぞうれっしゃ」ではないですが、ここに住む一人一人の考えによってこれから先、どんな風にでも変われる可能性のある街が、この「筑波」だと思います。

<コンサート情報>

公演は11月10日(土)の15時よりノバホールで行います。(14時半開場)
今回の公演は、2部構成で行われ、第1部では、リコーダーオーケストラの演奏、ゴスペルの演奏、手話や朗読を入れたメッセージソングを演奏致します。リコーダーは、小中学校でも使われている楽器ですが、今回の公演では大小6種類の楽器による30名の大合奏で、楽器の持つ魅力をお伝えしたいと思います。ゴスペルは、今、流行の音楽ですが、若者達のエネルギーが溢れ、歌い手も聴衆も「元気」を共有できるステージを目指します。それと、「ぞうれっしゃ」とゴスペルを歌うメンバー120名程で朗読や手話を交えた2曲を歌います。
そして、第2部が一般公募によるジュニアオーケストラの演奏と親子合唱団で上演する合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」となります。
入場料は一般・大学生1500円、中高校生1000円、小学生以下500円です。
問合せは、堀部(Tel.&Fax.0298-51-4318)または
E-Mail:arte@mail1.accsnet.ne.jpまで。

(Reiko)



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