2016-07

つくばにやってきて早4ヶ月。
風のように過ぎ去っていった日々を思い、感傷に浸る間もなく今日も明日もやってくる。
もう7月も半ばだ。夜になってもセミがジージーと鳴く7月だ。
そんな私はじっとりとした暑さを感じるアパートの一室で財布と対峙していた。

120円。

訳あって隣町の土浦市に行かねばならんというのに、財布の中身はたったの120円。
とてもじゃないが土浦駅行きのバスには乗れない。

そこで思い立ったのだ。
「チャリがあるじゃないか!!」
そして私はすぐさま中学の頃からの付き合いの、いつものリュックに荷物を詰めて自転車のペダルに足をかけたのだ。
土浦への道程は単純だ。Google mapの機械的な音声に合わせて道を進めばいい。

しかしだ。

暑い。暑すぎる。
右を見ても左を見ても広がるのは青々とした水田だけで、ギラギラとした日を遮るものも、熱風を遮るものもない。
たった数十メートル先の道路でさえ陽炎でゆらゆら揺れている。

灼熱の群馬よりは余裕だなんて思ったが運の尽き。つくばを完全に舐めていた。

ふと右側を見た。さっきまでは水田しかなかった右側。
あれは筑波山・・・?ではない・・・?けど山だ。一面に広がる水田の世界に新しいものが。
その瞬間、あることに気づく。風にそよぐ水田が、ありがちな表現で言うなら、青い絨毯に見えた。

ああ、これが”つくば”か・・・
さっきまで暑いと悪態ばかりついていた私は、広がる水田に誘われるように開放的になった気がした。

夏だ。
つくばの夏だ。
新天地で、全てが「初めて」に溢れた、長い、長い夏がやってきた。

その後、無事土浦に着くも、壊れた自転車の修理にかかる500円をリュックの底から見つけ出したという奇跡もここで綴っておかねばならないだろう。
私は、620円は持っていた。

 


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[16/07/19]

       
文章 たま
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